Asia Arsenic Network - 特定非営利活動法人 アジア砒素ネットワーク

中国の砒素汚染

中華人民共和国国旗

中国では、新疆ウイグル自治区のジュンガル盆地、内蒙古自治区、山西省などで飲料水による大規模な砒素中毒が起きています。また、貴州省では石炭に起因する砒素中毒があります。また長江流域を含む17の省で、新たに飲料水の砒素汚染が見つかったという報告もあります。

中国の砒素汚染マップ

内蒙古自治区

1962年に井戸水によるフッ素中毒が発見され、その対策中の1988年に井戸水の砒素汚染と中毒患者が見つかりました。

内蒙古自治区で砒素汚染地が集中しているのは、呼和浩特から臨河にかけての農耕地帯で、黄河と北方に連なる陰山山脈にはさまれた沖積平野(大黒河流域と河套平野)のあたりで、その中でも、黄河の描く東西2つの大湾曲部の外側(北側)に見られます。

1994年末の時点で、このエリアの砒素病区は5市11県に広がり、砒素汚染水(最高1.8ppm)を飲用する村は627か所、汚染人口は30万人、中毒患者は1,774人と報告があります。内蒙古自治区での汚染井戸水の飲用期間はかなり長く、病状も重く、肺がんなど内臓癌による死亡も多く見られます。

アジア砒素ネットワークの活動

アジア砒素ネットワークは1997年から内モンゴルの五原県勝利村をモデル地区とする調査と対策を実施しました。その後、2005年からは少数民族が住む辺境の地、正藍旗でフッ素と砒素の複合汚染対策の活動を実施しました。活動内容の詳細は以下のAAN内蒙古プロジェクト報告をご確認ください。

新疆・ウイグル自治区

新彊・ウイグル自治区のジュンガル盆地南西部にあるクイトンに、1951年ごろ入植が始まった開拓村があります。耕作地が拡大し、人口が増加した1960年代から、深さ100メートル以上のチューブウエルを利用するようになって、フッ素と砒素の汚染に直面しました。

調査によると、ジュンガル盆地の西南部、エビノール湖からマナス河への東西の一帯に高砒素地帯があり、その深層の地下水の砒素含有量は0.05-0.85ppmであることがわかりました。

1970年代にフッ素中毒、1980年代に砒素中毒の患者が見つかりました。住民の約半数の1万人が砒素汚染を受け、そのうち2千人が軽い砒素中毒にかかりました。

1988年10月、約70km離れた天山沿いに掘られた水源(6つの井戸)から安全な水の供給が始まって一応の解決をみました。

山西省

内蒙古自治区の南に燐接する山西省では、1994年以来、桑干河流域の5県(陽高、大同、懐仁、応県、山陰、朔州)で砒素病区が発見されています。

砒素汚染井戸水の飲用期間は20年近く、人口密度の高い地域であり、砒素汚染された住民の数は内蒙古をしのぐ60万人とも言われています。対策や患者数についての詳細は現在のところ公開されていません。

貴州省

貴州省は、雲貴高原の東半分を占める農山村地域です。傾斜面は、棚田や畑として利用され、森林を生活燃料として伐ったために資源が不足し、100年前から石炭を燃料に使うようになりました。その石炭に100~9,600ppmの砒素が含まれていて、煙突のない部屋で石炭を燃やした結果、砒素による健康被害が起こったのです。

一般に石炭の砒素含有量は1~10ppmで、多くても45ppm以下と言われています。貴州省の砒素汚染炭はその数値を大幅に越える100~9,600ppmの砒素が含まれていました。これは、貴陽市の地球科学研究所の教授によると、マグマの活動で熱水鉱床が地層を貫いて吹き上げるときに、その中に含まれる砒素により地層の中にある石炭層が汚染されるとのことでした。

この地域は冬季に雨の多い山地で、トウモロコシや唐辛子を収穫した後、屋内で石炭をたいて直に乾燥させます。この地域の住居やかまどには排気口や煙突がなく、煙の中に含まれる砒素が収穫物の表面に付着します。これを食べることで砒素汚染を引き起こしました。

この地域では、この砒素中毒は1950年代は「癩子病」という名前の風土病とみなされていました。1964年から始まった医学調査で砒素中毒だとわかり、1992年までに約3000人の患者が確認されました。患者は、皮膚がん、肝硬変、多発性神経炎など、重度の症状で苦しんでいます。

その後、貴州省当局は砒素汚染炭の採掘を禁止し、台所の改良と煙道の設置を奨励していますが、抜本的な解決には、石炭に代わる新たなエネルギー改革が必要です。

中国全土

長江流域をふくむ17の省で、新たに飲料水の砒素汚染が見つかったといわれています。

また、ある報告では、中国22省中の砒素暴露人口分布表により、0.05ppm以上の暴露人口は563万人で、0.1ppm以上の人口は229万人。高汚染地域は大河川の流域に集中している。その中でも上記の汚染地域以外にも、狭西省(37万人)、河南省(28万人)、山東省(12万人)、長江流域の湖南省(15万人)、安徽省(40万人)、江蘇省(20万人)、メコンと紅河の上流域の雲南省(20万人)が砒素汚染の危険にさらされているとされています。

調査が進めば、危険な井戸水を 飲用している人の数や、大気汚染(石炭燃焼等)による砒素汚染は増えていくとみられ、中国は、世界でも深刻な砒素汚染を受けている国の一つです。

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