バングラデシュ南西部における米農家の持続可能な生計向上のための間断かんがい(AWD)技術普及事業1年次完了報告

1年次完了のご報告
本事業は、バングラデシュ南西部のジョソール県、チュアダンガ県、クシュティア県において、干ばつや地下水ヒ素汚染の影響を受ける地域を対象に実施しています。
水不足の緩和と温室効果ガス排出削減など環境負荷の低減を図りながら、稲作の生産性向上を実現する灌漑技術「AWD(間断かんがい)」の普及を進めています。
本事業の特徴は、主に以下の4点です。
第一に、農家だけでなく、灌漑井戸所有者をAWD推進員として育成し、その能力強化を図る点です。
第二に、AWDを持続的に普及させるためのビジネスモデルの形成に取り組む点です。
第三に、埋設管灌漑のモデル設置を通じて、水利用効率と収益性の向上に関する効果検証を行う点です。
第四に、AWD普及における課題の把握と克服に関する調査研究を実施し、その成果を広く発信する点です。
1年次は、井戸所有者を中心とした普及モデルの構築と、AWDの実践的な展開に取り組みました。
本事業では、対象井戸所有者315名、対象農家3,150戸(井戸所有者1名あたり約10戸)を直接裨益者としてAWDを推奨しました。2025~2026年の乾季作においては、315名の井戸所有者が約346haの灌漑管理区域でAWD手法を適用し、約326万トンの節水効果が見込まれます。この水量は約357万人分の年間飲料水需要に相当し、該当地域の水ストレス緩和に貢献したと考えられます。
2026年4月の乾季作の収穫期には、AWDを実施した多くの農家から、水使用量の削減に加え収量の改善も見られたとの声が寄せられました。AWDは農家・井戸所有者双方にとって有益で、現場での受容性が高い技術であることが確認されています。
また、バングラデシュ政府によるAWD普及支援および適用地のモニタリング体制の強化にも取り組みました。バングラデシュの国別温室効果ガス削減目標(NDC)では、AWDの普及目標15万haに対し、公式統計上の実績は約1,300ha(1%未満)にとどまるとされています。一方で、AAN事業のみでも約2,000haでの実施が確認されており、現行統計は実態を十分に反映していない可能性があります。このことは、AWDが過小評価されている要因の一つと考えられます。実際にはAWDは農家および井戸所有者にとって有益で受け入れ可能な技術であり、その普及実態の可視化と適切な評価手法の確立が重要です。
2年次においては、1年次の成果を踏まえつつ、特に井戸所有者の主体性と収益インセンティブの強化に重点を置きます。研修や相互学習を通じてリーダーシップを育成するとともに、AWDが自発的に広がる条件の分析を進めます。また、灌漑ビジネスの収支構造の可視化を通じて、農家と井戸所有者双方にとって持続可能なモデルの構築を目指します。
本事業では、小規模農家とかんがい井戸所有者が、水危機と気候危機に強いAWD技術を活用し、生計向上を実現することを最終目標としています。
本事業は外務省NGO連携無償資金協力を活用して実施しました。
また、国際農林水産業研究センター(社会科学調査)、農研機構(水管理技術)、東京大学(効果の可視化)からの無償での技術協力に加え、土壌改良・水収支に関する尾崎昂嗣専門家および当団体横田代表・矢野副代表の支援を受けて実施しました。
関係者の皆様の多大なるご協力に、心より感謝申し上げます。

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