クルナ県における脆弱層を中心とした非感染性疾患(NCDs) 克服モデル普及推進事業活動報告
バングラデシュでは、心血管疾患や糖尿病など非感染性疾患(NCDs)による疾病負荷が、貧困層、農村地域、女性を含む脆弱層の間でも増大し、若年死亡や貧困化が課題となっています。AANは2013年からバングラデシュ政府保健サービス局と連携し、NCDの予防と管理に取り組んできました。
2023年3月からクルナ県にて「脆弱層を中心にしたNCDs克服モデルの持続的運営体制をクルナ県全域に構築すること」を目的に「脆弱層を中心とした非感染性疾患(NCDs)克服モデル普及推進事業」を開始し、クルナ県内の10の政府系病院(全9郡・県レベルの病院)にNCDサービス提供の拠点となるNCDコーナーを立ち上げ、環境整備や人材育成、データ管理システムの導入を行いました。2年間で公的医療サービスにつながったNCD患者は29,000人を超えました。そのうち7割は医療へのアクセス弱者といわれる女性が占めています。
2年次にあたる2024年度も各郡病院がNCDコーナーを主体的に、適切に運用できるよう政府側とプロジェクト側による合同モニタリングを実施しながら強化をしてきました。また、障害者、高齢者、女性が良いトイレがなくて病院に行きにくいと感じていることから、バリアフリートイレを設置しました。遠くから長距離をかけて来院する患者さんもいますので、安心して受診できる環境を作りたいです。


このプロジェクトではNCDコーナーの効果を確認するため、利用者900人に対する追跡調査を実施しています。2024年度に実施した中間調査の結果、NCDコーナーの利用が医療費の支出軽減をはじめ、参加者の知識・行動・健康状態に多面的な改善をもたらしていることが明らかとなりました。
特に費用面では、薬代の削減効果が最も顕著であり、ベースライン・中間調査ともに多くの参加者が500~1,000Tk程度の支出軽減を経験していました。加えて、治療費・交通費・検査代についても中央値での支出減少が確認され、多くの参加者が医療費削減の恩恵を実感しています。医療費負担が大幅に軽減されることで、NCDコーナーへの継続的な通院や治療への心理的・経済的ハードルが下がり、定期的な受診やモニタリングを通じて本人の意識や行動の変化にもつながりやすいと考えられます。結果として病状の改善にもつながり、身体機能が改善されればNCDsが理由による収入減も抑制される可能性があり、こうした効果を広く周知することで今後さらにNCDコーナー利用者の増加が期待されます。他方、効果は病院によっても差が見られるため、地域格差を縮小するための取り組みが必要です*。
2025年度は本事業の最終年度になります。本事業はNCD対策を一県全域カバーした初めてのプロジェクトでもあり、この事業からの学びを提言書にまとめます。



本事業は外務省NGO連携無償資金協力を活用し実施しました。
*中間調査報告書(山本有香)の一部を抜粋。
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