Asia Arsenic Network - 特定非営利活動法人 アジア砒素ネットワーク

【事業報告】ジナイダ県の農業における水管理と気候変動適応推進事業(1年次)

バングラデシュでは、米の増産を支えてきた灌漑用地下水の持続性が水量・水質の両面から危惧されており、AANはこの問題に対峙するため節水型稲作や乾季畑作を推奨してきました。この取り組みは、地下水を含む環境保全に寄与するだけでなく、生産コストの削減など経済効果があることも確認されています。しかし、近年、乾季の豪雨といった異常気象が頻発し、乾季畑作を拡大させる上で気候変動への適応策の確立が不可欠となっていました。

AANはバングラデシュの持続的な食糧生産を考える上で重要な要素となる水管理と気候変動適応の推進を目的とした事業を外務省の日本NGO連携資金協力を活用し、2021年2月~2024年1月の予定で実施しております。この事業では、農民が持続可能な水利用と気候変動に強い食糧生産方法を通じて適地適作を実践する力を養うことを目標とし、そのために現地の農業普及局が農民を継続的に支援する体制づくりにも力を入れています。

2021年春、30人ずつの農民グループを50グループ作り、1500人の農民の相互学習の場を立ち上げ、研修などを行いました。この事業では具体的には、水管理(地下水保全、洪水対策、地下水中の砒素等有害物質の拡散抑制)と気候変動適応(適応品種の確保、作付時期や栽培方法の工夫、土壌改良、病害虫管理、警報システム導入等)を推進しています。

この活動には政府や研究機関の専門家も複数参加されており、定期的に協議をしています。昨年度は、異常気象に強い作付けパターンや技術を政府や専門家と共に整理し、農民に紹介することに力を入れました。また、2021年12月に襲来したサイクロンJawadによる被害と対応を教訓として活かし「病害虫、渇水、洪水、防風によるリスク低減のための農気象と警戒システム」を作り、現在実体化を目指しているところです。

さらに食物中のヒ素汚染低減にも取り組んでいます。灌漑井戸がヒ素に汚染されていたとしても、現地の人はそこで作物を作り続けます。そうした中、灌漑用水がヒ素に汚染されていても、食物中のヒ素濃度を抑えることができるかはAANとして大きな関心事でした。そこで、高濃度ヒ素汚染のある田んぼに、水管理と土壌管理の条件を変えた実験地を用意し比較調査を開始しました。

実験にあたり、日本の国立研究機関である農研機構農業環境変動研究センターが発行するコメのヒ素低減のための栽培管理技術導入マニュアル〜コメの収量・品質への影響を抑えつつ、ヒ素を低減するために〜を参照し、同機構の研究者の皆さまにご助言いただき、試行錯誤しながら調査を進めております。この稲の収穫は5月か6月になる予定で、作物がうまく育ち、良い結果が出るのを期待しているところです。

2021年度は、新型コロナウィルスのデルタ株蔓延と感染防止のためのロックダウンの影響、季節外れの大雨など様々な困難がありましたが、スケジュールを調整をしながら、活動をほぼ順調に行うことができ、環境にも、人の健康にも良い農業の基盤づくりを進めることができました。

写真は大雨による作物の被害を防ぐためにプロジェクトの支援で掘削した池。耕作地の一部に掘るため、作付け面積は減るが、魚の養殖や土手を利用しての野菜づくりなど収入増加が見込まれる。

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