バングラデシュ節水かんがい(AWD)推進事業完了のお知らせ
バングラデシュ南西部の地下水ヒ素汚染と干ばつ地帯における節水かんがい(AWD)推進事業
世界的に異常気象や淡水確保は大きな問題になっています。バングラデシュにおいても、主食のコメ増産を目指して地下水に過度に依存した稲作が広がり、その結果として、地下水位の低下に伴う燃料費増加、収益性低下、温室効果ガス発生などの問題が起きています。AANはヒ素汚染村で飲料水供給を支援してきましたが、かんがいがフル稼働する渇水期(3-4月)になると多くの井戸が枯渇し、給水施設が軒並み不稼働になる苦い経験をしました。この問題の緩和をめざし2017年から節水稲作の普及に取り組んでいますが、その一環で2024年度に取り組んだ「バングラデシュ南西部の地下水ヒ素汚染と干ばつ地帯における節水かんがい(AWD)推進事業」が完了しましたのでご報告します。
この事業では、30農家ずつの42のグループを形成し、1260人を対象に活動を始めました。各グループから4人ずつをモデル農家として選出し、研修を受けたモデル農家が他の農家に伝えるアプローチをとりました。事業終了時の調査で、乾季稲作を行う1048農家の8割がAWDを導入し(乾季稲作の総耕作地の42%がAWDを適用)、残りの農家も作付けパターンの変更やホースの利用などの節水対策を行っていることが分かりました。
この他に、井戸所有者180人に対しても節水かんがいについて学んでもらいました。うち172人(96%)が給水域に何らかの節水対策を導入し、126人(72%)がAWDを適用したと回答しました。
一般的に、農家さんは新しい方法を小さな面積で試して、結果を確認してから拡大するため、今後さらに適用範囲が広がることが期待されます。乾季稲作の収穫は5月ごろになりますが、AWDを行ったことで、稲の生育状態が改善され、かんがいにかかる燃料費や労賃が低減できたと農家さんは喜んでいました。私たちは、節水の効果が高く、農家さんが受け入れやすい稲作を紹介できるよう、専門家の意見をいただきながら、日々勉強をしています。


埋設かんがいの設置
モデル地区には埋設かんがい施設を設置しました。埋設かんがいは、灌漑時間および漏水の削減、耕作面積の拡大(水路分)など良い効果がたくさんあります。埋設かんがいの農地でもAWDを実施しているため、電気代が半減したとのこと。周辺の井戸所有者は自己資金で埋設かんがいを敷設したいと話していました。


水位測定パイプの生産
間断かんがい(AWD)を実施する際、水田の水位を測定するために穴の開いたパイプを使用します。バングラデシュではこのパイプが市場で入手できないため、地元の人が水位測定パイプの生産を始めました。

本事業は外務省日本NGO連携無償資金協力を活用し実施しました。また、コメ中ヒ素低減稲作は、農研機構の協力を得て実施しました。この事業の成果は、「バングラデシュ南西部における米農家の持続可能な生計向上のための間断かんがい(AWD)技術普及事業」に引き継がれます。
- ホーム
- 事務局からのお知らせ
- バングラデシュ節水かんがい(AWD)推進事業完了のお知らせ