AANの活動

アジア砒素ネットワーク(AAN)は、1994年の結成後、アジアの地下水砒素汚染問題を解決するため活動を続けてきました。汚染被害の深刻な国バ ングラデシュでは1996年から本格的に調査を始め、2000年には現地事務所を開設、総合的な砒素汚染対策と砒素中毒患者の治療援助に取り組んでいま す。中国においては1996年から内蒙古自治区での改水事業をはじめ、現地の政府機関などを連携して対策を実施してきました。ネパールにおいても砒素汚染 調査と安全な水の供給をすすめています。またアジア各地で新たに見つかった砒素汚染地域の状況について情報を集めるなど、砒素をテーマにした活動を精力的 に展開しています。

私たちは土呂久・松尾の鉱害被害者とともに歩んだ経験をもとに、砒素汚染地の人々を中心におく「住民とともに歩む」理念で、以下のさまざまな対策を行っています。

●啓発活動

フリップチャート、ゲーム、映像、劇、カラオケ、展示などわかりやすい教材を使って、砒素の毒性、安全な水の重要性、予防策などを住民に啓発します。

●代替水源設置

事前の水門地質調査や住民要望調査を踏まえてさまざまな代替水源を提案します。この際にも住民の自発的な参加を重要視します。

●住民組織化

コミュニティ型の代替水源を建設した後、安全な水を継続的に供給し続けるためには、代替水源のメンテナンスが不可欠です。”自分たちの安全は自分たちで守る”自発性のもと、利用者による利用者組合を作り共同で管理していきます。

●水質検査

同じ地域の井戸でも砒素汚染濃度は異なります。眼の前の井戸には基準以上の汚染があるのに100m先の井戸には汚染がないこともあります。水源建設の際には必ず水質検査が必要です。また、砒素濃度は刻々と変化していきます。安全な水源であっても定期的な水質調査は不可欠です。

●技術開発・移転

地域で調達できる素材を使った代替水源を建設することは結果的に継続的な利用につながります。また住民に受け入れられる、シンプルで効率性の高い代替水源を開発することも重要です。

アジア砒素ネットワークは、バングラデシュ、ジョソール県に砒素センターを建設しました。この砒素センターを発信拠点として、AANバングラデシュスタッフによってバングラデシュのほかの地域で活動するNGOや住民、研究者、周辺の砒素汚染国へ、これまでの砒素対策で培った技術を普及していきます。

●治療支援

バングラデシュでは砒素中毒と認定された患者は約3万8千人います。砒素中毒症の患者には、医療機関から塗り薬やビタミン剤が支給されますが、内臓疾患や癌などの重症患者へのセーフティネットは確立されていません。アジア砒素ネットワークでは、そのような砒素中毒患者に治療や手術費を補助しています。また、砒素汚染のある村を視察し、砒素中毒患者の早期発見、早期治療を促したり、保健・医療従事者への研修も実施しています。

●患者生活支援

砒素中毒は、栄養状態の悪い貧困層に発症しやすいことが分かっています。アジア砒素ネットワークは、患者や住民へ栄養バランスのとれた食事をすることの大切さを伝える栄養プログラムを実施しています。また、治療で一時的に症状が回復しても十分な栄養と安息が確保できないと病気は回復しません。このように重症化してしまった患者の家庭に収入向上によって貧困化を防ぐ支援を行っています。

●政策提言

アジア砒素ネットワークが実施してきた砒素対策は、プロジェクト期間中だけでなく、その地域にプロジェクト後も定着し機能し続けることが重要です。政策へのシステム化のためにも公共機関などに提言していきます。