ネパールの砒素汚染

ネパールは中国、バングラデシュ、インドに囲まれた内陸国です。国土面積は日本の北海道、四国、九州を合わせたほどの大きさで、約2,800万人が暮らしています。国土は北部の高山地帯、中央部の丘陵地帯、南部の平原地帯の3つの地形的な特徴があり、この平原地帯(テライ平原)には人口の半数が生活しており、そこに高濃度の砒素汚染地域が広がります。

1990年代になってバングラデシュを含むベンガル地方で高濃度の砒素汚染が発見された後、ネパールでも1999年に初めて砒素汚染調査が実施され、砒素に汚染されたチューブウェルが明らかになりました。次いで2001年には砒素中毒患者が発見されました。

この調査を受けて、政府機関とNGO機関が連携して砒素汚染対策に取り組むための組織であるNASC(National Arsenic Steering Committee)が形成され、2004年1月にはNGOのENPHO(Environment and Public Health)と合同でまとめた報告書

“The State of Arsenic in Nepal – 2003”

を発行しました。

この報告書によると、テライ平原には約80万本の浅井戸があり、そのうちの18,653本のチューブウェルが政府機関・NGO機関によって調査され、そのうち7.4%がネパールの基準値である0.05mg/lを超えており(WHOのガイドライン0.01mg/lでは23.7%)、10m~30mの井戸で砒素の濃度が高かったと述べています。テライ平原の全20郡で汚染率が高かったのは中部から西部地区にかけてのRautahat郡、Bara郡、Parsa郡、Kapilbastu郡、Nawalparasi郡、Rupandehi郡、Banke郡、Kanchanpur郡、Kailali郡でした。

住民への危険性については、テライ平原に住む約69,126人(5.4%)が、ネパールの基準値を超す砒素汚染水を飲用しており、そのうちの約半数はナワルパラシ郡に住んでいると述べています。

しかし、この結果は全井戸のうちの約6%の井戸についての調査結果であり、全容の把握には至りませんでした。

その後2007年~2008年にかけて、NASCは11の国際機関やNGOの資金と技術協力を得て、テライ平原の20郡にある112万すべての井戸をフィールドキットによって調査し、それらのマッピングを行いました。その結果、ネパールの基準値である50ppbを超えるサンプルは全体の1.8%(WHO基準値では7.8%)、汚染率の一番高かったのはナワルパラシ郡で郡全体の47%のチューブウェルがWHO基準を超えていました。その他にも、Siraha、Sarlahi、Rautahat、Bara、Rupandehi郡などの汚染度が高い郡があります。

調査後の2008年~2009年にかけて、テライ平原20県のうちのホットスポットでのヘルスワーカー、フィールドワーカー(地方行政担当者)、学校関係者などへのキャパシティビルディング研修の実施、代替水源(雨水利用、深井戸、表層水など)の提案と建設、家庭用バイオサンドフィルターの配布などの砒素対策を実施しました。

対策が区切りをついた現在もNGOによってモニタリングが行われています。

ネパールの今後の課題としては、

①現地で有効であり、手ごろかつ社会的に認められる砒素除去技術の開発と、ホットスポットに住む住民への代替水源の提案などによる安全な水の確保、

②たくさんのNGOによる小規模な活動が実施されていますが、それら全体の管理・分析と協働体制の強化、

③NASCを含む砒素に携わる関係者の砒素対策技術の向上などがあります。

<アジア砒素ネットワークの活動>

アジア砒素ネットワークは2003年11月から、トヨタ財団の”アジア隣人ネットワーク”の助成を受けて、ナワルパラシ郡のパトカウリ村(108世帯597人)をモデル村にしたプロジェクトを始めました。

2005年に入って正常が緊迫度をましたため、プロジェクトを中断していましたが、2010年10月からは、JICA草の根事業「ネパール国ナワルパラシ郡における地域社会の砒素汚染対策能力向上事業」で活動が再開されます。

詳しくはネパールでの活動のページをご覧ください。