ベトナムの砒素汚染

ベトナムは南北に細長い国土を持ち、両端に大規模なデルタ地帯が広がっています。北側にはレッドリバーによるデルタがあり首都ハノイもここに位置します。南側にはメコンリバーによるデルタがありベトナム最大の都市ホーチミンが含まれます。この2つのデルタ地帯にはベトナム人口8,500万人のうちの約70%が集中しており、その2つの大河川流域に砒素汚染も広がっています。

ベトナムで最初に砒素汚染が報告されたのは2000年でした。その内容は、ハノイ周辺の地下水から砒素が検出されたという限定的なものでした。その後、UNICEFが中心となり2000年~2002年にかけてベトナム全域で砒素汚染調査をおこない、2004年10月に

“Arsenic Contamination in VIETNAM”

という報告書を作成しました。

この報告書によると、全国60県から25県を選びランダムに抽出した18,000の井戸水の水質調査をした結果、0.05mg/lを超える井戸が1%以上ある県が9つ見つかったと述べています。

レッドリバー流域では、HaNam、HaNoi南部、HaTay南部、HungYenの一部、NamDinh、NinhBinh、ThaiBinh、HaiDuongの8県で、レッドリバーの右岸側に連続して分布しています。その中でもHaNam県では0.05mg/lを超える井戸が62%見つかるなど局所的に汚染が激しい地域がありました。

メコンリバー流域では、DongThap、AnGiangの2県に砒素汚染が見られ、これらはメコンリバーがカンボジア側からベトナム領域に流出してくるあたりに位置しています。この2県はカンボジアの高汚染地域とも連接しています。

この報告書の後にも、局地的にプノンペンなど都市部で高砒素濃度地域が見つかっています。これらは地下水の異常な汲み上げや有機炭素など汚染物質の土壌への流出など都市特有の原因によるものか、さらなる調査が必要です。

砒素中毒患者については、HaNam県とDongThap県には、砒素汚染のない地域の住民の皮膚症状や癌ケースの統計と比較すると疑わしいケースはありますが、政府によって認定された患者は2004年の時点ではいません。これは、2004年の時点で井戸水の利用期間が10年未満であり深刻なケースに結びつかなかったことが理由としてあげられています。

その他にも、ベトナムの砒素汚染については、12月から5月にかけての乾期に地下水の砒素濃度が高くなるなど季節によって変化があることが報告されています。また、砒素のほかにも鉄、マンガン、アンモニアなどの濃度も高く、これを含めた水対策が求められています。

<アジア砒素ネットワークの活動>

アジア砒素ネットワークは、2008年から2010年まで、地球環境基金助成により「メコンデルタの飲料地下水汚染問題に対する調査研究と環境改善」事業を実施しています。これは、DongThap州を含むメコンデルタの砒素汚染地域で汚染調査・住民調査を実施し汚染のメカニズムを明らかにし、被害防止のための提言を行うというものです。詳細は、AANの活動のページ(メコンデルタ)をご覧ください。