中国内蒙古プロジェクト2005

2004年8月、内蒙古自治区正藍旗において飲料水の砒素汚染が明らかになりました。正藍旗は少数民族がほぼ半数をしめる民族雑居地域で、自治区の中でも辺境地区です。近年牧畜業の形態が変化し、住民たちの基本的生活条件も変化してきました。その結果、生活に不可欠な飲料水が不足し、悪化してきています。なかでも宝紹岱のいくつかの村は砒素濃度が高くて、飲料に適さない地下水を飲用せざるを得ない環境にあります。

現地の改水事業へのニーズは高いのですが、そのためには総合的な環境保全の視点に立って、専門的な水文地質的調査結果を踏まえた計画が必要とされます。現地にはその知見が乏しいことから、河套平野での改善実績をもつAANに協力の要請がきました。そこで、地球環境基金の助成を受けて、今後も生活環境の悪化が見込まれる正藍旗の汚染地域において、現地と協力して問題解決にあたることにしました。

この年度の活動は、問題解決のための調査が主でした。汚染状況や汚染メカニズムを明らかにしました。改善のための代替水源も把握しました。これらの調査結果をもとに、安全な飲料水を住民に届けるための活動を、次年度以降汚染地住民と協力して進めます。

【活動の概要】

2回の予備調査と2回の本調査を現地で実施し、年度の後半は調査結果の分析と評価ならびにフッ素除去剤の開発の実験に取り組みました。まず、年度当初から6月までを予備調査とし、正藍旗の汚染状況を調査しました。この予備調査は、モデル地域を選定することを目的とし、日本の調査チームが現地の調査員を指導し、指導を受けた調査員が中心となって進めました。

7月から9月には2回の本調査を実施し、5つのモデル地域を精査することにしました。住民健康調査や水文地質学的調査、電気探査、試掘ボーリング等を実施しました。汚染物質の特定やその原因解明、問題解決への方策を探ることが目的です。

10月からは、国内で調査結果の分析評価やフッ素除去法について分析実験をおこない検討を重ねました。分析や実験は中国の華南大学や新潟大学の協力を得て進めてました。

【活動の結果と効果】

飲料地下水はフッ素、硝酸態窒素、砒素に汚染されている。砒素については局所的であり汚染の程度も比較的軽微だが、フッ素と硝酸態窒素の汚染は広範囲であり汚染の程度も高い。

フッ素汚染の原因は、現地の蛍石や燐灰石に由来し、流動時間が長い地下水に溶解したことによる。硝酸態窒素汚染は家畜の排泄物が原因である。

安全な飲料水の水源としては、水文地質学調査や電気探査の結果、汚染地から一定距離内に代替水源が確保できることがわかった。

現地には汚染地に小集落も多いことから、簡便なフッ素除去装置の開発も必要である。