バングラデシュ、15年の重大変化(4)

バングラデシュは、いろんなことで驚かせてくれるし、楽しませてくれるし、この十数年を退屈することなく過ごすことができた。そんなKK-Rakanが、バングラ観がひっくり返るほど大きな衝撃を受けたのは電動リキシャを見たときだった。

重大変化の8は「電動リキシャの登場」である。

福岡アジア美術館の目につくフロアにバングラデシュのリキシャの実物が展示してある。幌に描かれた美しい絵とともに、自転車の後ろに人を乗せて運ぶリキシャの構造全体を美術品としてとらえているのだ。

美術館で観た幌の絵は美しすぎて、リキシャワラが汗だくでこいで街を走る、汚れて擦り切れた実物からはかけ離れている、とそのとき思った。ところがその後、美術館に置いてあるものに引けを取らないほど鮮やかなデザインのリキシャをダッカ大学の構内で見た。そのときは、ダッカ大学の構内には素晴らしい美術品が走っているものだとやたら感心した。

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(ダッカ大学で見たリキシャ)

真黒く日焼けしたリキシャワラが、細い体の筋肉をひきしぼり、でこぼこやぬかるみや坂の道を2人どころか3人乗せて、歯を食いしばってこいでいく。それこそリキシャだ! アジアの美術の収集にかけては定評のある福岡市中洲の美術館が収納したのも、すぐれたデザインの幌をつけたリキシャをこぐ肉体労働があるからなのだ。そう固く信じていた。

サドルに足をおかず楽ちんして、笑いながらすいすい走るリキシャワラを見たとき、目からうろこがぽろっと落ちた。人力ではなくモーターで動いている。その動力はバッテリーだ。電動リキシャが登場したのである。

伏線は、イージーバイクと呼ばれる小型三輪バッテリー車が中国から輸入されてきたことだ。ベビータクシーやCNG(天然ガスを燃料にする小型三輪車)の普及していないジョソールの街で、あっという間にイージーバイクの数が増えた。リキシャより多くの人を乗せるので料金が安いし、リキシャより速く走ることができる。打撃を受けたリキシャ関係者の中に知恵者がいて、イージーバイクに負けじとつくりだしたのが電動リキシャだ。

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(リキシャワラの足の位置にご注目)

ナラヤンが運転するプロジェクト車が電動リキシャとすれちがった。

「ジョソールのリキシャは何%が電動リキシャに替わったんだい」とKK-Rakanが問う。

「5%くらいですかね。リキシャワラだってきついのがいやだから、バッテリーとモーターをつけたいですよ」とスタッフが答える。

それではリキシャの否定につながるのではないか。福岡の美術館の展示にしても、リキシャワラがしゃかりきになって足でこぐからアートになるのであって、電気で走ったのでは美術的な価値がなくなるんじゃないか。

そんな気持ちが裏にあって、KK-Rakanが「スピードがでるので、ぶつかったときに座席から振り落とされそうで怖いよ」と批判的に言う。

すると別のスタッフが、「昨日、私が乗っていた電動リキシャがカーブを曲がりきれずに横倒しになりました。リキシャワラは下敷きになったけど、私は手を擦りむいただけでしたよ」と笑わせた。

運転の技能がまだ電動の速さに追いついていないようだが、楽を求めるのは人間の常だから、たくましくてたくみな足技が消えていくのはそんなに遠くないかもしれない。