バングラデシュ、15年の重大変化(2)

重大変化の4は、「金権社会で多発する残忍犯罪」である。

一時期話題になった犯罪に、ダッカ市の少女が自宅シャワールームで両親をバラバラに解体した猟奇事件がある。少女は「ヤバ」という覚せい剤の常習者だった。

バングラデシュ社会の薬物汚染はかなり深刻だ。KK-Rakanも、咳止めのドリンク剤の中毒にかかったプロジェクトスタッフを解雇したことがある。薬を買うために、プロジェクトの名前を使って町の商店から金をかり、プロジェクトの同僚からも金をかりまくっていた。

こうしたドラッグの密売が、闇社会の資金源になり、残忍犯罪にからんで表にでる。

先月末からマスコミをにぎわしているナラヤンゴンジの殺人事件も、おそらくこうした資金と結びついているのだろう。

事件は4月27日、ナラヤンゴンジの裁判所をでた市会議員と弁護士の乗った2台の車が襲われ、合わせて7人が誘拐されたことから始まる。騒ぎが大きくなったのは、数日後の30日と5月1日、川を流れる7人の遺体が発見されてからだ。遺体は、コンクリートの重しをつけて川底に沈められていた。

その数日後、殺された市会議員の義父が「事件の主犯は別の市会議員で、この人物がRABの地方幹部に6000万タカ(1タカ=1.34円)を渡して殺害を依頼した」と、容疑者の名前をあげて告発した。事件は、政治とビジネスがからむという単純なものでなく、背後に大金で殺害を引き受けた治安組織が潜んでいる、という構図になってきた。

RAB(Rapid Action Battalion)は、高度化する犯罪に対応するため、2004年に軍と国境警備隊と警察のよりぬきで結成したエリート組織である。

これまで、RABと書いたトラックの荷台に銃を持った屈強な隊員が乗っているのを見ると、なぜか安心感を覚えていた。それだけに、RABの中に高額のお金で凶悪犯罪を引き受ける闇部隊があるなんて、KK-Rakanには信じがたかった。

裁判所の命令を受けて、警察は、出身母体の軍にもどっていた元RAB地方幹部3人を逮捕した。拘留尋問で、元RAB地方幹部は犯罪にかかわったということを全面的に否認し、いまも取調べがつづいている。

世間は、凶悪犯罪を金で買うRABの中の闇部隊の存在に関心を寄せている。KK-Rakanの関心事は少しちがって、6000万タカという金額のばか高さだ。逮捕された元RAB地方幹部に関連して、「私の夫が誘拐されたとき、その人物から2000万タカの身代金を要求された」と名乗り出る女性も現れた。

これが事実なら、バングラデシュの裏社会で動く金の大きさは中流国並みということかもしれない。

主犯の市会議員宅が捜索され、銃などとともに密売していたドラッグが摘発されたとき、やはりここでも出てきたか、とKK-Rakanは思った。

関係者は次々と逮捕されているのに、主犯は国外に逃亡したとみられ、その姿は消えたままだ。その声が意外なところで表にでた。7人が誘拐された2日後の4月29日、主犯が地元出身の国会議員に電話をかけて「多くのミスをおかしました。ごめんなさい。デリー行きをアレンジしてください」と頼んでいる。

携帯電話のやりとりをどこで誰が録音したのか。誰がどんな目的でメディアに流したのか。謎をふくんで、5月23日、電話の音声がテレビで放送された。

バングラ金権社会で起こる残忍犯罪の典型的な事例である。どこまで真実が明らかになるのか、わからぬままに漂っている。

6 旬のライチ

(旬のライチ)

重大変化の5は「消えたホタル」だ。

昨日(5月24日)、今年初めての嵐を経験した。午後2時から40分余り、雷鳴がとどろき、強風が木々を揺らし、雨をガラス窓にたたきつけた。

嵐が去ると、アパートの玄関前にプールができていた。ほこりまみれだった木の葉につやが戻っていた。水道の蛇口からでる水はひんやりして気持ちよかった。ただ、停電した電気はなかなか戻ってこなかった。

嵐が1日に1、2度やってくる。これが、5月半ばをすぎたバングラデシュだ。こんな日の夜、ホタルが舞うのを楽しんだのだったよな、となつかしむ。隣のバステ・シェカのゲストルームに泊まっていたころ、乱舞するホタルに歓喜したものだった。あんなにいっぱいいたホタルが、ジョソールから姿を消したのは何年前のことか。

原因は農薬である。

いろんな目的の農薬があるので、ホタルの激減と関係ないかもしれないが、KK-Rakanが恐れるのは、果物に使っている農薬だ。

今年は、子どもがスイカを食べた直後に死んで問題になった。甘くするために使った農薬が原因だったからだ。(といったん報道されたが、1週間後に、スイカから農薬は検出されず原因は「食中毒」だったと訂正する記事が載った、と読者からご指摘を受けた。)

1か月つづいたスイカのシーズンに、KK-Rakanは3個しか食べなかった。やたら色が赤いと、薬で色づけしたのではないか。数日間冷蔵庫においても鮮度が落ちないと、薬を使っているのではないか。そんなことばかり思うから、甘いスイカを口にしてもおいしいと感じない。

数日前、いきつけの屋台の果物屋にマンゴが並んでいた。粒が小さいし、皮にしわができていて、見るからに不味そうだ。その横で、葉っぱをつけたライチを売っていた。旬のライチである。店の若い者は、ライチを買わせたいらしい。

「マンゴは薬を使っている」と、KK-Rakanに小声でささやいた。

なんだ、お前はすべて知っているんじゃないか。どれが薬漬けで、どれが安全か、を。腹がたって、ライチを買うのをやめた。「マルタ」と呼ばれるオレンジを1キロ5個150タカで買った。店の若い者のしぶい顔が「これ薬使ってるよ」と語っているようだった。

昨夕、ジコルガチャ事務所長のピープルが、活きのよい葉っぱのついたライチの房を届けてくれた。メヘルプール県の義父の家でとれたのだ、という。薬漬けの心配のないとれたてのライチである。うれしい、おいしい、と10粒食べた。今日も、10粒食べるとしよう。

バングラデシュよ、このうれしさ、おいしさを隣人と分け合う国でありつづけてくれ。     (つづく)